2019.2.25 (月)
場所:それぞれの場所
あるく みる きく つくる
展覧会をやろう、となった。
結局どういう経緯でこういうことになったのか、実はいまでもよくわかっていないのだが、準備のために、たぶん全部で5、6回はほぼ全員で集まったと思う。仕事帰りなどに夜遅く集合したこともあった。
私は作品として、最初はこの展覧会の『図録』をつくろうと思っていた。それも皆が作品をつくる過程も含めた、Ongoing なものを。もちろん、当初の目論見は外れた。そもそも目論見通りにいっては面白くない、ということはこのスタディで学んだこと。最終的に私は、メンバーそれぞれに、スタディを通して気づいたことなどをきいた『インタビュー集』をまとめることにした。
ほかのメンバーも、時間に追われつつも制作を進めていった。
宮地尚子さんと平田絵美子さんは、ふたりでカラフルな絵を描いた。そのうちのいくつかはいまでも私が持っている。いつ見てもどことなく楽しげで、爽やかで、良い絵たちだと思う。
芦沢友紀子さんは、布やマットレス、日用品を使って、息子さんと一緒に制作されていた。親子で何かつくるのも良い。大きめのインスタレーションで、中に入るととても落ち着く空間が生まれる。
加藤忠さんも、大きなダンボールでできたヘルメットを使ったインスタレーションをつくっていた。
芦田忠明さんは、ご自身の半生をテーマにした映像だった。想像以上にBGMがポップで、まだまだ彼の知らない面があったんだ、と驚いたりした。
金丸泰子さんは直前まで、何を展示するか悩んでいたことを覚えている。悩めることが許された時間と空間だった。それは本来、当たり前にあるべきなんだけど。結局、金丸さんはご自身の仕事で知り合ったお子さんと制作することにしていた。
松山雄大さんは映像を用いたインスタレーションで、文章を書いた紙を天井からぶら下げたものだった。
芝辻ペラン詩子さんはクマのぬいぐるみを使ったインスタレーションで、少し哀しさを感じさせるような作品だった。
辻隆公さんは、ずっとセメントと木枠、そして聴診器やスピーカーまで使って壁際で制作していた。果たして完成するのだろうか? と私は訝しんでいた。
ゲストアーティストの3人も、それぞれに制作を進めていた。
大西暢夫さんは、「被写体は人間」と語る彼の眼差しを裏付ける写真を飾った。
花崎攝さんは、フィリピンの棚田に注ぐ陽光と雨を思い出させるような展示を。
揚妻博之さんは、確かバルト海で撮ったという巨大な写真と、会場となるシャトー2Fの地下にある廃墟のような空間で、映像や音、光を使いながらインスタレーションをするつもりだ、と語っていた。
私の作品も、一応できた。白地に黒文字で印刷されただけの、素っ気ない冊子である。それぞれの参加者に話をききき、あるいは文章を書いてもらいながらなんとか完成。自分なりの「あるく、みる、きく」をかたちにできたのは嬉しかった。唯一不安だったのは、200部も刷って、いったい何部はけるのか、全く予想できないことだった。
しかし、予想や計画ができてしまうのはつまらない。私は展覧会準備が終わる頃には、すっかりスタディ5に染まっていたようだった。
Text=吉立開途