2018.11.23 (金·祝)

第4回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

日本における彫刻について学ぶ

1/5

もやもやと思っていることを話したことで、改めて浮かんできた問い、それは「彫刻とは何か?」である。彫刻について何も知らない私たちは、彫刻家でありながら研究・執筆・出版活動を並行して行っている小田原のどかさんをゲストに招き、彫刻に関するレクチャーをしていただけることになった。

小田原さんは、日本で彫刻教育が始まって約140年が経過した現在、“彫刻とは何か”という問いが立たなくなってきたと語る。「芸大や美大の彫刻科の学生たちにはパフォーマンスをつくりたいという人が増えている。彫刻の基本である、彫る、削る、という行為は全て身体で行うものだし、つくっている間は当然ですが物体が変化するので、作者の視覚には映像的な変化が起こる。なので、彫刻というメディアに興味を持ち学ぶ彼らが、パフォーマンスや映像などの作品をつくりたいという欲求が生まれるのは自然なことであり、ミュンスターにおいてもそのような形式の作品が増えているのは必然的です」。
その他にも、いわゆるフィギュアのようなものや、広く立体アートという捉え方でジュエリーなども彫刻とみなす考え方もある。その変化に、教育が対応できていない部分があるそうだ。そんな状況の中「彫刻とは何か?」を問い直したい気持ちから『彫刻1』という本を出版した、という説明を皮切りに、レクチャーはスタート。西洋から輸入された「スカルプチャー」で近代建築を装飾する技術者を育成することを目的にはじまった「日本の彫刻教育」と、それ以前から日本に存在した仏像や盆栽などの「彫刻的なもの」との関係性。近年日本のまちなかに多く見られるアニメキャラクター像が置かれる現象は、かつて西洋で起きたナショナルヒストリーを体現する人のモニュメントを設置するムーブメント「Statue Mania(彫像建立癖)」の名残なのではないかなど、一口に「彫刻」と言っても、その内容は広く深いことを知った。

ディスカッションでは、「日本のアニメキャラクターの銅像に見られる、2次元が3次元になるようなことは西洋ではないのか?」(稲継美保)、「そもそも“彫刻”という言葉はいつから使われはじめたのか?」(佐藤慎也)といった質問から、彫刻とパフォーマンスの共通点や相違点について話題が及んだ。
小田原さんは「ヨーロッパには「彫刻」という教育はないようで、西洋でsculptor(彫刻家)を名乗るひとはほとんどいない」「ミュンスターのほかにsculptureを冠する芸術祭は聞いたことがない」と発言。「sculpture」と「彫刻」が同義ではないという重要な指摘があった。
また、「彫刻は、時間を扱う点でパフォーマンスと交点があるのではないか。またほかの美術メディアよりも“ここ性”のようなものを示せるのではないか。その素材は身体でも可能な気がする。そこにも、パフォーマンスと彫刻の交点があるのではないか」という東彩織(居間 theater)の発言から、場所性やサイトスペシフィックとは異なる「ここ性」というキーワードも浮上した。
終盤、稲継が「ミュンスター彫刻プロジェクトに行くよりも、なんでもいいから作品をつくりたくなった」と言うように、刺激的で創作のヒントとなるような対話が繰り広げられた。

「ミュンスター彫刻プロジェクトに出たい!」という想いをきっかけに出発したこのスタディは、小田原さんとの時間を経てある興味が募るようになった。それは、「彫刻という概念とその拡張、パフォーマンスとの交点」と「ミュンスターに対して、東京というまちの彫刻やパブリックアート、芸術祭について」である。このふたつをどちらも活かしながら、次の段階へ進みたい。そんな想いの中、実際に彫刻をみたい気持ちが高まり、次回は「東京の彫刻」をみるフィールドワークに出かけることになった。

Text=堀切梨奈子

関連資料

第4回についてのお知らせメール
詳細をみる閉じる

差出人:坂本有理

2018年11月22日(木)

件名:第4回についてのお知らせ

スタディ2参加者のみなさま

こんにちは。坂本です。
明日はスタディの第4回目となります。

内容
・彫刻家であり彫刻研究家でもある小田原のどかさんによるレクチャー。
・全体でディスカッション/空想地図作家の地理人さんも参加予定です。

参考:
小田原のどかさん公式サイト http://www.odawaranodoka.com
地理人研究所 http://www.chirijin.com
ゲストをまじえて、彫刻について、また彫刻をとりまく問題について
学び考える時間となればと思います。

それではまた明日〜!
よろしくお願いいたします。

………………………………………..
公益財団法人東京都歴史文化財団
アーツカウンシル東京

坂本 有理

第4回についての補足メール
詳細をみる閉じる

差出人:坂本有理

2018年12月7日(金)

件名:屋外彫刻調査保存研究会による調査資料について

スタディ2のみなさま

前回(11/23)のスタディに関連した情報の共有です。
小田原のどかさんのレクチャーの際に少し話題にでた、
屋外彫刻調査保存研究会による調査資料について、現在問い合わせをしてみていま
す。

屋外彫刻の調査リストと報告書というのはおそらくこちらだと思われます。

・屋外彫刻調査保存研究会会報(1999〜2013年)※国立国会図書館所蔵。ムサビ図書
館にも所蔵あり
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000162253-00
・屋外彫刻一覧(チェックリスト)
http://www4.famille.ne.jp/~okazaki/zenkokuchousa1.htm
—————-
その他の参考として、
屋外彫刻調査研究会のサイトに、会員によるイベントなどものってました。
屋外彫刻おそうじ体験、とかやっているみたいです
http://okucyoken.sakura.ne.jp/tswp/?p=366

次回は、教室をでて、みんなで公共空間における彫刻をみて
まわるのもよいのではないかと検討中です!またご連絡します

ではではよい週末を〜。

………………………………………..
公益財団法人東京都歴史文化財団
アーツカウンシル東京

坂本 有理