2021.10.31 (日)

第5回

場所:いせやほり

話を始める、耳を傾ける

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10月31日、代田橋にある古民家レンタルスペースいせやほりにて第5回のスタディが行われた。
天気は雨。衆議院選挙の投票日でもあったためか、ゆっくりと集まり始めるメンバーたち。

この日は、改めてそれぞれの関心やつくってみたいものの話をする時間にしたい、と事前に呼びかけられていた。そういえば、このメンバーでのんびりと話す機会はこれがはじめて。
サンドイッチやお弁当、お菓子を広げて、開始まで自由に過ごす。これまでのワークの内容や感想を共有する時間が自然と広がり、話に花を咲かせる様子はまるで正月の親戚の集まりのよう。

ナビゲーターの和田もお弁当片手に合流し、本題へ。
(ナビゲーターの岡村は個展のため欠席)

「今回は、スタディに参加しているみなさんが、改めてどんなひとで、どんな作品をつくっていて、どんなことが好きなのかというようなことをここで一回ほぐしていけたらなと。なんか、ほんとに正月みたいですね、最近何やってるの?みたいな」
と、和田。この時間をメンバーとともにどう過ごしていくか、かしこまった空気をほぐすように話す姿が印象的だった。

また、
「これまでのスタディでゲストと感覚をほぐすワークをしてきて。自己紹介をしつつ、あのときこういうことが印象的だったとか、それぞれの経験をことばでつかまえられたら」
と、スタディマネージャーの嘉原がことばを添える。

メンバーの大塚が持ってきた手作りのモフモフしたボールを持つ/受け渡すというかたちで話し手を回していくことに。また、手元にカードが配られ、気になったことなどを自由に書き留めていく。

(大塚の手元にあるのが手作りのモフモフ)

リサーチノートや試作品、映像、写真、WEBサイトなど。それぞれが持参したこれまでつくってきたものやメンバーに紹介したいアイテムを広げ、ひとりずつ、ゆっくりと自分の話を始める。
(欠席だったメンバーの水野からも事前にビデオメッセージが共有されていた)

(画像:水野のビデオメッセージより)

「立体は苦手なんだけど、どうしても服にしたいという思いがこぼれ出てくる」
「見たいと思っている世界や近くにいるひとを知れる媒体としてダンスをやっているのかな」
「うまくいってないコミュニケーションの方がおもしろい、むしろ伝わらないというところをいかにうまくつくれるか」
「大学に入ってから詩に出会った。同じことばでも詩というかたちになったときに表せることがあるなって」
「小さい頃に骨だけを動かすのが好きで、それがあそびの原点だったと思う」
「お芝居やダンスをやっているのは、表現は主の目的じゃなくて、そこに向けてくるひとたちとかかわれるからだなって」
「ことばを封印してコミュニケーションを取るのは興味があります」
「主題は建築の時間性。それがこのスタディとどうつながってくるかはまだわからないんですけど」
「せっかくだからひとりではなく、一緒にできることをしたいな」

衣服、ダンス、書くこと、対話、あそび、食べられるインスタレーション、詩、華道、茶道、演劇、現代美術、建築史・・・。これまでにつくってきたもの、つくり始めたきっかけや背景、もやもや、いま関心があること。
プレゼンでもなければ、単なる説明でもない。「わたしはこのひとたちに何を伝えたいのか?」を探りながらことばが手渡されていくようだった。
聞き手もまた、それぞれがつかんだ糸口から感想や質問をことばにしたり、じっと静かに耳を傾けたり。
軌跡が垣間見えるノートや作品が重なり合い、入り混じり、卓上にも心地の良い景色が広がっていく。

途中、メンバーの伊藤が「暗めにしていいですか?」と尋ね、部屋の明かりを豆電球に切り替えた。
実家のような設えも相まって、居間はいっそうおだやかで、親密な雰囲気に。

背景を話すなかでは、自ずと人生の変遷や辛い記憶にふれるひともいる。それらはあくまでこの場、この関係性だから差し出された話。
メンバーの大迫が口にした、
「これまでのいろいろがあっての、当然の創作活動なんだなという感じ」
ということばが、すっとからだと場に浸透していったように感じた。

「話がしたいからスタディに参加したんだと思います」
そう話した大塚の提供したモフモフは5時間近くなでまわされた結果、毛糸がほつれて、いや、ほぐされて、ずいぶんとかたちが変わっていた。

「ゴールに向かってぱっと出してこれが成果です、ということより、何周もしながらつくりあげたり、もう少しひととのかかわりや関係性のなかでものをつくったり。同時に、そのひとのなかにある“ここまでいってみたい”というのを探求してほしいというのもある。もう少し持ち寄って出し合うというプロセスを踏めたらと思います」
と、和田が場を締め、解散。

これからどのように作品をつくり、そして届けていくのか。
わたしたちはきっとまだ出会ったばかりだ。

写真:齋藤優衣(1〜12枚目)、木村和博(13〜17枚目)

text=阿部健一、齋藤優衣