2018.11.16 (金)
第3回
場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)
東京/地方で「つくる」意味
「ここでつくる/ここではないどこからでつくる」と題した3回目。ゲストにお迎えしたのは城崎国際アートセンター(KIAC)プログラムディレクターの吉田雄一郎さんと、山山アートセンター主宰・美術家のイシワタマリさん。それぞれかたちは違うが「アートセンター」の運営や主宰に関わっており、東京で活動や生活をしていたこともあるが、今は別の場所で活動をしているという共通項を持つお二人とともに、「どこでつくるか」をめぐってディスカッションを展開した。「東京でつくる」と、「東京ではない場所でつくる」は、果たしてどのような言葉を交わし合うのだろうか。また前回のゲスト、井上知子さんが来日中ということもあり、この日も引き続きゲストとして参加した。
吉田さんは大学で建築を学んだあと、東京でアーティスト・イン・レジデンスの仕事や舞台芸術のフェスティバルなどに関わり、その後、兵庫県豊岡市に移住。KIACのプログラムディレクターとしてプログラムの企画運営に携わっている。最近はまちの中にある川の痕跡をテーマにし、多分野のアーティストとともにツアー型のパフォーマンスをつくった。KIACは24時間使える施設なので、稽古しながらごはんに行ったり、温泉に行ったりして、皆で寝食を共にしているような感覚で、のびのびと制作に取り組める環境だという。
イシワタさんは、横浜や東京から京都府福知山市に移住したアーティスト。周辺一帯の山々全部を「山山アートセンター」だと見立て、アート教室や広報紙の発行、トークイベントなどを行っている。住んでいる地域でかつてひょうたんづくりが盛んだったことを知り、「ひょうたん畑付き高齢者施設」をつくろうとしている。「誰も必要としてない場所でアートセンターをどうやってつくれるかを考えていった結果たどり着いたのが、ひょうたん畑付きの高齢者施設なんです。これまで京都・大阪・神戸にばかり目が向いてたんですけど、どうしたら福知山という場所で自分の思うアートができるかを考えたときに、逆に不便といわれている周辺部に引っ越してみたら物事が変わっていくかなと。偶然ですが、いい所に引っ越したと思っています」(イシワタさん)。
ここで吉田さんからメンバーに対し、「なぜ東京でつくる必然性があるのか?」と質問が投げかけられた。東京は情報や鑑賞者が多く、地方で「つくる」こととは感覚が違うという話になり、メンバーの小林大悟は「東京でつくることは、結局鑑賞者に依存しているところがあるのかもしれない」と発言。また地方では見に来てくれる人、関わってくれる人などの顔が見えている状態だからこその苦労、面白さがあるという話も出た。
また、「山山アートセンターのようなものが東京でできるか?」というメンバーからの質問に対してイシワタさんは「思わない」と答え、例えば広報紙にしても東京ではジャンルの近しいものやクオリティの高いものがたくさんあるから、山山アートセンターでつくっているような手作りの広報紙は読まれないかもしれない。地方ではそういったものが新鮮だと受け取られ、共感する人が個人単位で集まってくるが、東京でそのイメージは持てないと理由を述べた。
これまでの話を受けて、アート関係から福祉の仕事へと転職したメンバーの五十嵐春香は、自分が転職したことは地方移住をミニマムにしたようなものだと実感を語り、その中で今何を始められるかを考えていると続けた。
また石神自身が「東京でつくる」ことに格闘している理由をメンバーに向けて語る場面もあり、なぜ「東京でつくる」のか、なぜ演劇をしているのかという理由を肌で感じ取ることができた。
最後にイシワタさんは「本当はそれぞれの人の今の話が聞きたい。絶対皆抱えてるものがあるのに、情報の話をするじゃないですか。パーソナルなことを人に向けて話すことによって自分も思い出すことがあるはずだから、そういう話を書いてもらったらいいなと思った」とエッセイについての提言を。
吉田さんは「東京にいないけれど、でも東京と関わっていないかというと、そんなことはないはず。城崎や豊岡にいても東京と絶対つながっている。そういうつながりっていう関係性もあるはずだから、必ずしも東京の近くにいないと東京でつくれないかっていうと、そんなこともないんじゃないかなと思いました」と、今回のディスカッションをまとめた。
今後の展開について、来月以降フィールドワークを交えていくことを検討している、と石神。それぞれが感じている「東京のアンタッチャブルゾーン」に皆で行ってみるのもいいかも、というアイデアも挙がり、活動の向かう方向を感じさせながらこの回は終了した。
Text=嘉原妙
関連資料
第3回についてのお知らせメール
詳細をみる閉じる差出人:石神夏希
2018年11月16日(金)
件名:第3回についてのお知らせのメール
皆さま
こんにちは。エッセイの提出ありがとうございました!
皆さんの書いたものを読んでいると、自分ももっと書きたいな、
書かなくちゃなという思いが湧き上がって、そわそわします。
本日のゲストは
・吉田雄一郎さん(城崎国際アートセンター)
・イシワタマリさん(山山アートセンター)
のお二人です。前回ゲストの井上知子さんも来てくれるそうです!
[プロフィール]
吉田雄一郎さん
城崎国際アートセンタープログラム・ディレクター
1979年、兵庫県生まれ。兵庫県豊岡市在住。トーキョーワンダーサイト、フェスティバル/トーキョーなどにて、コーディネーターとして勤務したのち、2015年から兵庫県豊岡市の舞台芸術専門のアーティスト・イン・レジデンス施設・城崎国際アートセンターのプログラム・ディレクターとして、レジデント・アーティストの選定や主催公演などの年間プログラムの企画立案に携わっている。北近畿・山陰地域の緩やかなアートネットワークを構想中。演劇カンパニー・マレビトの会のプロジェクト・メンバー。
http://kiac.jp
吉田さんが2017-2018年にプロデュースした作品。
『うつくしいまち』
『Kawalala-rhapsody』
イシワタマリさん
1983年横浜生まれ、福知山市・三岳エリア在住。慶應義塾大学で「スピリチュアリティにまつわる社会学」を学び、ニューヨークで「アート」の存在を知る。アーティスト・イン・レジデンスでスペイン北部バスクやベルリンなどに滞在した経験を活かし、2015年よ り京都府北部を拠点に「山山アートセンター」の構想を展開中。「このあたりのしんぶん」編集長、「絵本の世界の絵画教室」主宰。
移住についてのインタビュー記事(少し前の記事です)。
私のお二人との関わりは、2017年。
吉田さんがキュレーターをつとめていた
京都府舞鶴市でのアーティスト・イン・レジデンスの企画に参加して
『青に会う』というプロトタイプを制作しました。
そして大学時代の友人であり、福知山に移住していたイシワタさんと再会し、
行き来が始まりました。
舞鶴でのAIRのプロセスは以下『舞鶴日記』に書いています。
今回、おふたりを招いたのは
ふたりともかつて東京や横浜で暮らし・つくっていた期間が長いこと。
そして今は、今ふたりのいる場所でなければ考えられない
東京ではきっとできないユニークな活動を行っていること。
そんなおふたりの視点や感性を鏡のような存在としてお迎えして、
皆さんの「東京でつくる」がどう映るのか
ぜひ話をしてみてほしいと思いました。
個人的には、彼らがいるからこそ、私は関西に移住しようと思っていたのですが
結局、さまざまな偶然から、今は東京で暮らし・つくっています。
そのことは、自分の中で、まだ気持ちの整理がついていません。
そんなわけでまだ「東京でつくる」に戸惑っている自分にとっては
このおふたりと話さないわけにはいかないのです。
終了後は懇親会を予定しているのでもしよかったら是非、ご参加ください。
では今日も、どうぞよろしくお願いいたします。