2018.10.6 (土)

第2回

場所:小金井市環境楽習館

ブラインドウォークと小枝

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つい先日まで、私の手元には一本の乾ききった小枝があった。あまりにもぼろぼろになってしまったので、写真を撮って土に返してあげたが、それがこの回の思い出だった。

この日、正直まだお互いの名前もよくわからないまま集まった私たちは、とりあえずペアをつくるようナビゲーターの宮下美穂さんに言われた。「こんにちは。すみません、お名前ってなんでしったっけ……」といったような会話をそこかしこでしていた。
それぞれペアができた。さらに、くじ引きで小さな紙片を二つばかり渡される。「水を飲む」「寝っ転がる」など、わりあい日常的な、他愛もないような動詞が書かれていた。

まだ、夏が残るような暑い日だったと思う。我々は小金井環境楽習館の庭に出た。ペアの片方は目隠しをして、片方が寄り添う。ほんとうに危険に近づいた場合は合図で止めるが、そうでなければ特に静止しない。また、言葉は使わないように、とあらかじめ言われた。
その少し前にもらった紙片には、ペアの相手にすることだった。要は、たとえば「水を飲む」なら、目隠しされた相手に水を飲ませなくてはいけない。言葉を使わずに!

私の方が先に目隠しをして庭を歩いた。ここでとても印象的だったのが、ペアの人が山椒の葉っぱを手のひらに乗せてくれたことだ。私は驚いて、つい手から振り払ってしまった。普段、視覚から情報を得ているから、それを制限されることで臆病になっていたのだと思う。
でも、緊張はしていても恐怖は感じなかった。まだ会って2回目の相手に自分を託す。それは勇気を必要とすることだ。そのことが逆説的に警戒や恐怖を拭っていた、そんな気がする。
あるいは、私たちは普段からそういうことをしているのかもしれない。バスに乗っているとき、我々はバスの運転手さんに生命を預けている。そうとも意識せずにだが。このワークは、それを可視化しただけだったかもしれない。

次に、私が目隠しした相手に寄り添う番になった。途中まで肩に手を置いてもらっていたが、私は近くにあった木の枝を彼女に握らせた。意図はすぐ伝わった。危険がほんとうに近づかない限り、なるべく干渉を控えた。
もちろん、視覚障がい者が持つようなすっとした白杖とは全く違う。先は枝分かれし、地面を触る感触はふわふわとしている。それでも、彼女は鷹揚に視覚以外の感覚による世界を楽しんでいたように思う。

庭での冒険が終わったあと、それを絵に描いてほしいと言われた。私は、先ほどの枝を絵の一部に用い、さらに密かに自宅へ持ち帰った。

Text=吉立開途

関連資料

第2回についての報告メール
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差出人:宮下美穂

2018年10月7日(日)

件名:第2回についてのレポート

みなさま

おはようございます。
昨日は陽に当たってお疲れのことでしょう。
ご欠席の方が3人いらしたので、ほんの少し、昨日の様子をお伝えしますね。

第2回「身体と感覚を拡張する」

講師:花崎攝さん、揚妻博之さん
参加者:9名+小学2年生、1年生男子(また来てね)
おやつ:ブータンのお茶、玄米茶、アールグレイ(瀧本さんがお支度くださいました)、ぶどう、えびせん

・花崎さんの身体をほぐすワークショップ

普段触れないところを触ったり、骨と筋肉を離したりするなど、自分で自分の身体に触れてみることをしました。
だんだんと身体が温かくなっていきましたね。足の指と手が握手するのは気持ちよかったな。
長い間使ってきた身体を大事に感じることができるといいな、と私は思いました。

・ブラインドウォーク

2人1組になって(生まれ月別にチーム編成)、楽習館の庭を一人15分ずつ歩きました。
最初の方と2番目の方に違う気づきが得られるよう、導き手の方にキーワードをくじ引きしてもらいました。
初回は、自然環境とは質感の違うビニールシートや梱包用プチプチを公園の中に配置。交代した最初の導き手の方は既知の場所となっているので、交替後に素材を追加して、ぶどう、えびせん、紅茶の葉、コーヒーなどを公園内に配置。15分は長いかなと思いましたが、そうでもなかったかな。
組み合わせが偶然ではありましたが、秀逸。寝転ぶ人、かなりの早歩きで歩く人、山椒の枝に驚く人などなど。小学2年生と大学3年生のペアも。
「目をつぶって歩いていて、昔の記憶を思い起こした」という発言が印象的でした。

・大きな紙に描いてみる

110cm*125cmの厚手のワトソン紙、9種の樹木の木炭、太い鉛筆、墨汁、刷毛、手製の筆(稲わら、てるてる坊主)など、モノトーンで軌跡を描く。
その後、一緒に歩いたペアに戻って、振り返りをしつつ、一人一人のモノトーンの軌跡の紙を用いて造形、描画(透明水彩絵の具、色鉛筆、日本画の絵の具、パステルなど発色の良いもの)。

・振り返り

参加者3人が1つのグループになり、そこにスタッフが参加しました。
気づきや気になったこと、興味関心など。予定時間を過ぎてしまい、おしまい。
グループごとに、面白かったことなどなど教えください。

【次回予定確認と宿題の予言】

次回、10/27(土)のアナウンスと宿題を一両日中に送ります。
古い画材を少しお持ち帰りいただきましたが、スケッチブックを活用して、なんでもOK、ぜひ身体と頭を動かしてみてください。

この日は、台車でガラガラ帰りました。
次回もどうぞお楽しみに!

宮下美穂

第2回の宿題メール
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差出人:宮下美穂

2018年10月11日(木)

件名:第2回の宿題について

みなさん

東京は今朝、雨でしたね。
大西暢夫さんは日本中走り回っているかな。今日はどちらにいらっしゃるのでしょう? 花崎攝さんは松本ですか?

揚妻博之さん、山形はいかがですか?
中上健次がパウル・ツェランについて書いているエッセイはぜひ読んでみたいですね。
10/17(水)瀧本さんと宮下は山形入りします。寒河江とダムに行ってみようと思っています。最上川を遡上するのもいいかもしれません。

揚妻さんの制作録 http://agetsuma.sblo.jp

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前回のワークショップの際に出てきたいくつかのキーワードを元に、小さなお持ち帰りワークを考えました。次回までに、ぜひトライしてみてください。
宿題を抱えてまちを歩くのは憂鬱かもしれませんが、それによってものの見え方が少し変わるかもしれません。

以下の3つの中からお好きなものを選んでやってみてください。もちろん全部でもOK。感覚のフィールドノートは、毎日やってみても楽しいかもしれませんね。

①野宿の記

野宿をめぐるイメージや記憶について、エッセイやスケッチ、写真など(写真+エッセイも可)を書いてみましょう。文字数は問いません。
私は、多摩川の土手のネムノキの下が気に入っています。寝転んで夜空を見上げたらどんな風かな、などと思うことしきりです。

②身近な人々

みなさんの身近な人を写真に撮ってください。その人について小さな文章を書いてください。ケータイでもデジカメでも構いません。
1,000文字以下の文章を書いてみましょう。文章の形式は問いません。

③感覚のフィールドノート

日々感じる様々なことを、色や形で描いてみましょう。
郷愁を感じたとしたらその郷愁から想起される色や動きを描いてみましょう。嬉しかった時は? こんちくしょーの時は? 
最初はたくさん描く必要はありません。感覚と感情は少し違うかな?

次回、少しゆっくりと時間をとって感想やアイデアを話しましょう。
ううう、苦しい、という方は、ううう、苦しいからもうちょっと先に、でも大丈夫です。できる範囲でやってみてください。

雨で滑らないといいですね、地下鉄の入り口やマンホール。
ではでは!

宮下美穂