2020.10.23 (金) 〜 10.25 (日)

第4回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)、江戸東京博物館

“それ”以外をリサーチして、つくる

1/28

ダンサー・振付家・演出家のトチアキタイヨウさんをゲストに招いてのワークショップは、空想地図の記憶も新しい次の週末に、3日間連続で行われました。

1日目は金曜日の夜、いつものROOM302に集合。フルーツバスケットのように円を描いて座るメンバーの中央に立ち「パフォーマンスをしようかな」と、トチアキさんはおもむろに動きだします。その後「何を見ていましたか? 何かを思い浮かべましたか?」「何かを思い浮かべることは、立ち会っているその瞬間に想起されることもあるし、後から思い浮かべることもあると思うんです」と問いかけることから始まりました。
その後、トチアキさんはご自身を「世界的なカンパニーのダンサーだったのに、表現に悩んで、石を食べる活動を始めたおかげでフレンチのシェフになった人」とキャッチーに自己紹介をしながら「こんな風に、自分ではちょっと違うなと思うけど、他の人に興味を持たれることが孕むギャップって、自分でテーマを見つけるときに大事」「できるだけ正しく伝えたくて言葉を選びますが、言葉を受け取るのは他人なので、他人の言葉で書くしかない」と、メンバーにもキャッチーな自己紹介を書いてみることを促します。また、作品をつくることとリサーチの関係については、「作品は境目に現れるものだと思っています。自分の言葉だけだとかたちが見えてこないときは、テーマに関係ありそうだけどできるだけ遠いことのリサーチから始めて、小さい作品(ワークス)をつくりながら、テーマを深めていきます。透明人間にお湯をかけると何かが見えるような感じです。」「じっと構えていると、見えないと思うんです。フォーカスを合わせているものは焦点が合ってよく見えるけど、“それ”以外をどうやってとらえることができるのか」「リサーチの目的は、今はまだ焦点が合わなかったり、輪郭がとらえられないような物事を予感すること。そのために試しています」と、テーマとしたいことがあったときに“それ”の外側から考えてつくっていくことのイメージをちりばめていくような時間でした。

2日目は土曜日、集合は江戸東京博物館の会議室。トチアキさんが「幽体離脱ってしたことありますか?」とメンバーに問いかけるところから始まります。みんなで準備体操のように少し身体をほぐしたあと「今日は、建物の中とか外でいろいろしてみます」と、“居心地の良い場所を探すこと”と“目的のないものを探すこと”をお題に約3時間、各々時間を過ごします。陽の当たるベンチ、ぎりぎり認識されない角度で人を見ることができる物陰、横向きに座ると心地良い椅子・・・それぞれが見つけた場所を共有しつつ会議室に戻り、1日を通してそれぞれ何が印象に残ったのかについて「目的のないものを探す、という目的を考えてしまい矛盾を感じた」「白菜を買って手に持っていることで人目を避けて、居ることができた」「エスカレーターを使った幽体離脱の方法を編み出した」「博物館の敷地を出てまちを歩いているときが、一番無目的だった」「集合時間に四方から集まってくるメンバーが戦隊ヒーローみたいでカッコ良かった」「生垣に挟まったとき、場所に対する強すぎる自我に苛まれた」と振り返ってみます。最後にトチアキさんから「印象に残ったことから、明日は何かを置き換えたり、入れ替えてみたり、ためしてみましょう」と言われ、2日目は解散しました。

3日目の日曜日も江戸東京博物館にて。“小さくつくる、かたちにする”をお題にそれぞれが小さな作品をつくってみることになり、この日もメンバーは建物の中やその周辺へ散り散りに、約3時間のつくる時間を過ごしました。
出来上がった作品は「遊具がない場所でも楽しそうに遊ぶ子供が印象に残り、自分もここで遊んでみようと編み出した“広場のタイル模様をつかったゲーム”」「自分にとって最も無目的な行動である“鼻歌の歌い方の指示書”」「博物館のピロティが待ち合わせ場所や駅までの通り道など、人によって目的が違う場所になっていることに気づいたので“ピロティを公園という目的で使うことを試みた映像”」「無目的に場所を歩くための“人によって読み方が変わる地図”」「無目的な時間を抽象的に記録するための“視点の採取方法”」「ポテトチップスを食べる、という誰かの目的が終えられ“ゴミ箱に捨てられていた空袋に新たな目的を与えるためにつくったカバン”」「無目的な散歩の途中に見つけた“猫じゃらしを使った遊び”」など。
最後に「かたちにすることをギリギリまで避けつつ、ドキドキするけど、なんとかなるかな、みたいなことってあります。数多くつくってみるのがいいと思います」「置き換える、広げる、なかに入れる、などをやってみると大事な部分が見えてくると思う」とトチアキさん。明確に自分が指し示すことができる“それ”以外に目を向けることについて、考えたり、試したり、つくってみる3日間となりました。

Text=堀切梨奈子
Photo=冨田了平