2020.11.11 (水)
第7回
場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)
“問い”をひらく・“トーキョー”を想う
今回はこれまでのワークを振り返る、通称・振り返り回。今年のスタディはゲストを招いてのワークショップと振り返り回が交互に行われていきます。前回の振り返り回では「“つくること”を言語化すること」がお題となっていましたが、今回は「“つくること”を通して考えたことや気付いたことから“問い”を抽出し、メンバー内で共有すること」をお題に大和田さんとのワークを振り返りました。
「音は動詞(動作)によって出ているけど、動詞の手前には何があるのか」「意味のある音と意味のない音の違いって何だろう。そもそも、意味ってどんな意味か」「人の気持ちはわからないけど、自分が相手になろうとする変化のなかで、相手に近づくことができないか」「普段は気に留めない些細な音を貴重なものとして扱い、フォーカスしてみたい」「意識と無意識の境目を掴みたい。一方で、どこが無意識かを思う時点で、意識しているジレンマもおもしろい」「無意識と意識の境目はグラデーション。誰かに言われて何かするのではなく、気付いたらやってしまっていた、という(カレーの匂いの源を探しているような)表現がしたい」「音を聞きながらまちを歩くとまちの見え方が変わるように、イメージに対して音をいれてみたい。嫌いなまちも好きになるかも」「ある発された音を、変換して、脳で受けている。考えていることと感じていることにもズレがある。そのズレを感じたい」
スタディメンバーから出てくる“問い”は“つくること”に関する言葉よりも抽象的ですが、メンバーからの応答を重ねていくことで少し広がりを見せたり、輪郭やそれ以外のものが見え、“つくること”の背後にある各々の興味や関心を共有する時間となりました。
後半、ナビゲーターの佐藤から『トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト』の今後の大きな方向性についての問いかけ。
「今年のスタディでは最終的にスタディ2というアーティストチームとして、ミュンスターを見据えた作品を考えて欲しい」「チームとして“つくること(=スカルプチャー)”を考えるとき、“プロジェクト(=問い)”をひらくという感覚がある」「つくる上で、いろんな視点の持ち方が必要なので、つくる立場についても考える必要がある」「つくるとき、自省だけでは進まないので、外にひらいて言語化して欲しい。自分がやったことを客観的に考えるために、今回は問いを抽出してもらった」と、『トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト』に込められた思いが語られました。
さらに佐藤から『トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト』のもうひとつのキーワードである「“トーキョー”に触れていくにはリサーチが必要。視点の広げかたと、判断して縮めていく方法を考えないといけない」と投げかけられると、メンバーそれぞれが抱く“トーキョー”が主な話題に。
「東京でつくることって、二度見するようなことなんじゃないか。わざわざ産み出して足すというよりは、すでにあるなかからピックアップして、違うものをつくることが、東京でつくるときの所作」「二度見するつくりかたをこれまでやってきて、今の自分の興味としては、裸婦像を撤去した後に、台座に何を置けるのか。裸婦像は今、設置されたとき時にはない不快感や問題がでてきていて、じゃあ今なら何を台座に置けるのか」「イタリアに行ってから、東京の魅力がわからなくなった。東京には歴史を感じられる場所や、心の拠り所とされている場所がない。歴史や文化を継承しつつも新しいものを受け入れる、という姿勢が東京には感じられない。東京を好きになりたい」「東京はすごくおもしろい」「日本人は外のものを自分たちの文化に取り入れていくところがあって、見た目の変化はすごくある一方で、根付いているものもあると思う」「東京っていうもの自体は、問題をすごく孕んでいるけど、問題がありすぎて問題が見えないし、問題は複雑で複層的。自分の実感はあるけど、問題自体が見えにくい。どこをどういう角度で見ればいいのか、何から触ったらいいのかがわからない感覚」
『トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト』はずっと、“トーキョー”で“つくること(=スカルプチャー・作品)”に取り組んでいましたが、今回はじめて“チームで取り組むプロジェクト(=問いをひらく)”や“トーキョー”について言葉にして、じっくりと話す機会となりました。
Text=堀切梨奈子
Photo=冨田了平