2021.3.28 (日)
第12回
場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)
8ヶ月間の歩みを振り返る。そして5年後の自分へ
最終回のこの日は、まずナビゲーターの阿部航太が、個々のプロジェクトを集約するウェブサイトを制作することを説明し、サイト名を決めることからスタート。
阿部から示された「関わりの記録」「ワンダリングノート」「ビヨーーンド」「マーブリング」の4案を基に議論した。
「横文字(カタカナ)だと意味がわからない」といった懸念や、「『関わりの記録』のようにタイトルをシンプルにした方が個々のプロジェクトが目立つのでは」「サイトを見る人はプロジェクトの背景を知らないので、日本語の方が優しい感じがする」などの意見が上がり、最終的には多数決で「関わりの記録」に、「内省的な」「反射する」などを意味するReflectiveという単語を加えた「関わりの記録 Reflective Notes」に決定した。
続いて、ひとりひとりのプロジェクト名について、グループに分かれてディスカッションした。
メディアのかたちに悩み続けていた鄭禹晨(テイ・ウシン)は、音声メディアにすると決定。
プロジェクトとして、日本に暮らす香港人や台湾人、中国人らと中国語での雑談を企画し、在日外国人の視点でそれぞれの考え方の違いや共通点などを共有し合ったという。
「なのでタイトルも中国語を使いたいと思います。それぞれ(異なる)個人なんですが、共通点もあるということで、『あなたと私の話』を意味する『你我(ニーウォ)』にしました」と説明した。
また中国語が分かる戈文来からは、「你我は、『あなた』と『私』と分けながらも一緒である状態を強調する感じです」との補足もあり、ほかのメンバーが興味深そうに聞き入っていた。
別のメンバーの横山尚子は、別れに関する人々のエピソードを、ゆかりのものと一緒にzineのかたちで紹介するプロジェクトを進めているといい、「Collection of Goodbyes〜別れのモノがたり」と命名。
「恋バナなどの大衆が好む俗的なものと、シリアスな社会的問題をうまく結びつけたい。タイトルはあえてモヤっとさせて、読み終わった最後に『こういうことを言いたかったんだ』と知ってもらえるようにしたいです」と狙いを語った。
プロジェクトのネーミングに関する話し合いを終えると、次はスタディ初日に阿部から配られた「観測ノート」をどんなふうに使っていたかをテーマにディスカッション。
「結構ぎっしり書いていました」「スタディ以外で起きたことも書いてありました」という人もいれば「正直あまり活用できていなかったな…」と残念そうに振り返る声も。
また、取材した音声メモを聞き直していたら、観測ノートのなかにも同じようなテーマの記述がメモされていたことに気がついた、という人もおり、「半年で急には変わらないということですね」「最初に感じていた(他者と関わる上での)ハードルについては、まだまだ自分のなかで議論中」「堂々巡りになっちゃうので、ノートに書いて悩むよりもやったほうが早い、と感じられたのも学びだった」などと、8ヶ月間を分析していた。
このグループディスカッションを終えると、いよいよスタディも最終盤に。
最後のお題は、「5年後の自分に手紙を書く」というものだった。
便せんと封筒が各メンバーに配られ、阿部が「どうしてもみんなコミュニケーションをとるなかで、『あんまり変なこと言えない』みたいな気持ちがあったと思います。そういうものを一度全部取っ払って、スタディを終えてのまとめでもいいし、今思っていることなり、未来の自分へのメッセージなり、なんでもいいので書いてみてください」と意図を説明。書き終えた手紙を入れた封筒を、5年後に阿部がメンバーの住所に送るとした。
いきなりすらすらと書き始めるメンバーもいれば、じっと考え込む人、ROOM302から場所を移動して綴ろうとする人など、思い思いの方法で約1時間かけて便せんを埋めていった。
この8ヶ月間、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、なかなか対面で集まることがかなわず、もっと実際に会って交流を深めたかったという声も多く聞かれた。
それだけに、メンバーにとってまちなかでのフィールドワークや、この日のようなROOM302でのセッションはいつも以上に濃密で貴重な時間になったと思う。
この日も最後まで名残惜しそうにROOM302に残り、スタディの思い出や、プライベートの話、仕事や人生のことなど、さまざまな話題で盛り上がりながら、今後の健闘を誓い合った。
Text=鷲見洋之